【第99期講座】2008年01月-2008年06月

石井 吉徳の講座リポート


■はじめに
東京大学名誉教授の石井吉徳氏はNPO法人もったいない学会を立ち上げ、「石油ピーク」に備える脱浪費と無駄のない社会変革を唱えておられる。
しかし石井氏の提唱する「もったいない」は、世の中のもったいない運動とは次元を隔するものがあるとの印象を強く感じた。それは「石油ピーク」に対する認識の強さ・深さに起因するものと思われる。
世の中にある多くのもったいない運動による節約のススメには、化石燃料によって築き上げられた文明を維持し、発展させることを目指しているようだ。しかし、石井氏の視点は「石油ピーク」を迎えた以上は、石油による文明は衰退していかざるを得ないという科学的な視点である。これまでのように石油を湯水のように使えないのであれば、使えないなりの「生き方」が問われてゆくはずだ。それならばどういう選択をしなければならないかについて真剣に考えなければならないと石井氏は強く主張される。
そのヒントが石井氏の提唱される『プランB』ともったいない運動の推進にある。
■石油ピークは石油枯渇とは違う
石井氏は「石油ピークは2005年5月でした」とデータを示して指摘する。
詳しくは石井氏の公式HP「http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/」をご覧いただきたい。
石油という資源は有限であることを誰もが理解できるのだが、その有限な石油の生産量がピークを迎えたことを実生活の中で感じることは難しい。かつて1974年に日本が経験したオイルショックのときには主婦がトイレットペーパーを求めて殺到したことを思い起こすが、有限な資源の争奪戦が起こることは予測に難くない。

石井氏は、石油ピークは石油枯渇とは違うと強調された。産出すればすぐに使える質のよい石油がどんどんと少なくなっているということだ。地球上にはあらゆるところに石油があるだろうが、現在の油田に相当するほど質の高い石油がこれからどれくらい発見されるのかは疑問であるという。したがって、地球的規模で節約し、大切に使えば石油ピークはずれ込むことはあるにしても、やがてはピークを迎え、そして質の悪い石油を産出するために石油等のエネルギーが必要となり、さらに質の悪い石油の産出にはその量以上のエネルギーが必要となってゆくというように予測できる。

20世紀・21世紀の文明は「石油」という奇跡的な資源によって発展してきた。
しかし「石油ピーク」をどうみるかによって、この文明のあり方が問い直されることになるだろう。
石井氏によれば、「ほとんどの人たちは楽観的です」と指摘する。その理由として、まだ地球上には石油が豊富にあると信じている人、あるいは科学の力によって新しいエネルギーが開発されるというものが挙げられる。今、私たちが享受している科学文明が継続してゆくであろうと信じられるというのは、なんとなくわかる。しかし「資源は有限」という事実に対して、その真実を見ようとしない姿勢は問題ではないだろうか。

■代替エネルギーの可能性は?
そこで石井氏が指摘したのは「代替エネルギーに対する評価をどうみるか」ということである。

「資源とは」
1.濃縮している
2.大量にある
3.経済的な位置にある

これはエネルギー資源の「質」が一番重要であることを示している。
そこで石井氏は「EPR」(Energy Profit Ratio)を指標としてエネルギー資源を評価するこことで、代替エネルギーの質とその可能性を示してくれた。

EPR=出力エネルギー/入力エネルギー

つまり、「EPR」とは、出力エネルギーを得るためにどれだけ入力エネルギーを必要としたかを示すものだ。エネルギーを生み出すために必要なエネルギーがどれだけかをみれば、そのエネルギーの質がわかる。少ないエネルギーでたくさんのエネルギーを生み出すことができれば質が高く、たくさんのエネルギーを使って少しのエネルギーしか生み出せないのであれば、エネルギーを生み出す意味がなくなってしまうため、そのエネルギーは質が低いということである。

資料によれば、話題となっているトウモロコシによるバイオエタノールのEPRは1.3とあった。かろうじて1を超える程度であるバイオエタノールが石油に代わるものになるとは思えない。石井氏は「食糧とエネルギーの争奪戦が始まりました。これは間違いなく食糧が負けます」と指摘したが、すでに小麦粉などが値を上げ始めている。高く売れるトウモロコシを作りに走れば、当然他の農作物が小さくなる。エネルギーを得るために食糧との争奪戦が始まるというのも考えものである。大規模な農地に大量のエネルギーを使ってトウモロコシをつくり、そのトウモロコシからエネルギーをまたつくるというのも不思議な感じがする。

これからもっと代替エネルギーの議論が盛んに行われていくに違いない。
その評価基準としての「EPR」を意識しておくことが大切になるであろうし、代替エネルギーに対する考え方が明確にするために役立つのではないだろうか。

■崩壊を回避する『プランB』
石井氏によれば、「プランA」とは現在の社会状況を示しており、「プランC」は現実問題を恒久的に解決し、あるべき姿を実現するためのものであるという。本当は一気に「プランC」にゆけばよいけれど、それは現実的に難しいので、その橋渡しをするためのプランを提示したものが「プランB」であるという。

「石油ピーク」は必ずやってくることは間違いない。石井氏はそのピークはすでに2005年5月であったと指摘する。そうであるなら、石油文明の限界がやがてやってくることになるはずだ。
石井氏は、これからの生き方や考え方を変えてゆくべきときがきているのではないかというので、『プランB』を以下のように提示しておられる。

『日本のプランB』:石井吉徳 2007.10
1)脱浪費、無駄をしない、日本の自然75%が山岳
2)米欧追従を止め、グローバリズムに振り回されない
3)1970年頃の生活を参考に、エネルギー消費半分
4)少子化、人口減をチャンスとする
5)運輸は鉄路の再認識し、公共的な運輸機関を整備
6)集中から分散社会、自然エネルギーは分散利用
7)分散社会を育てる技術、地産地消の自然農業
8)循環社会は3RはReduceが大事