【第96期講座】2006年07月-2006年12月

小田 全宏の講座リポート


■はじめに
小田全宏氏は松下政経塾出身で、これまで人間学を研究しながら、人間教育を軸に社会教育に尽力しておられる。その思想は『陽転思考』を核としており、ものごとを肯定的に受けとめて、どんな逆境にあっても明るく、積極的に生きるための実践教育を展開しているとのことである。

小田氏は現在、脳を鍛えて記憶力を高めるための独自のトレーニングを展開しておられる。脳力開発は大きなブームを迎えているが、小田氏のトレーニングは一過性のものではなく、人間の脳の働きを活性化するといったところに特長があるらしい。
■記憶力が落ちるのは「歳」のせい?
小田氏は2年前、学校の先生たちのためにリーダーシップとコミュニケーションのトレーニングを泊まり込みで行っていた際、先生たちから「子どもに覚えさせるのは大変だ」という話を聞いた。そのとき小田氏は、「覚えるのは簡単だよ」と言ったところ、先生方は誰も信じなかった。そこで記憶のちょっとしたパフォーマンスをしたところ、是非に記憶のトレーニングをしてほしいとの依頼をされたという。以来、クチコミで記憶のためのセミナーがひろがり、今では来年の6月までセミナーのスケジュールはいっぱいになってしまったという。

小田氏によれば、忘れっぽくなるのは「歳」のせいではないという。錆びついた脳を活性化すれば、80歳の老人でもどんどん記憶力が伸びるとの事例があると語っている。脳は使わなければ錆びついてしまうし、能力は落ちるばかりであるというのは誰でも知っている事実であるが、本当に努力をすることは忘れがちである。

■記憶力がある=頭がよい?
教育の現場では「考える力をつける」ことを大切に考えているようだが、小田氏は「テストで100点満点を取ることと頭のよさは違う」と指摘する。つまり、テストで出される問題に対して答えを知っているかどうかであって、その答えを知っていることが即、頭がよいとはならないというのである。
小田氏は目の前の聴講生にこう質問した。「あなたの結婚は正解でしたか?」。これは正解にすべく両人が努力をし続け、生涯をかけて導きだすものである。人生にはそのような問題はたくさんある。そしていくつもの難問に挑戦して人生を豊かなものとしなければならない。そのための基礎として記憶力は有効にはたらくともいえるのではないか。

■素読のススメ
日本人の基礎は何といっても「読み、書き、そろばん」であった。
現在の日本の教育は詰込みをやめて、ゆとりをもって子どもが理解し学ぶことができるようになっているらしいが、小田氏は「子どもがどれほど脳に詰め込むことができるかを知らない人たちの勘違い」であると指摘する。

昔は幼い頃からわけがわからなくても素読をした。寺子屋では「子曰く・・・」と論語を素読し、年齢を重ねることでその意味を知るようになり、経験を重ねることで深みを味わうようになるものだ。

声に出して素読をすることで、たくさんの言葉に接する。人間の豊かさは語彙(ごい)の豊かさでもある。心に起こる感情をどの言葉に乗せるとピッタリするかは、どれだけ言葉を知っているかによるものだ。表現するときに感情をうまく言葉に乗せられないと、感情を身体的に表現するしかない。それが内にこもったり、外に出て爆発したりする。

子どもの頃から素読をするのは大切なことなのである。

■陽転思考で人生を積極的に創造する
78歳の老人が小田氏のトレーニングを受けたとき、耳も悪くて皆がとても難しいと感じていた。しかしこの老人は一生懸命に挑戦して、ようやく20個を記憶することになった。周囲のメンバーはすでに100個とか200個というレベルまで上がっていたが、この老人の必死さと搾り出すような言葉に、皆、固唾を呑んで見守っていた。最後の1つを発した瞬間に周囲のメンバーから万雷の拍手が沸き起こったという。その場面は本当に感動的なものであった。なかなか記憶できない老人に周囲の人々は、努力する素晴らしさと、達成する喜びを学んだ。小田氏は「速きこと必ずしも尊からず」と感じたという。

小田氏は記憶の天才をつくるためにトレーニングをしているのではないという。脳の処理速度をアップすることで、(1)物忘れがなくなる、(2)いろいろな情報が入ってくる、(3)人の話を聞くようになる、という人間にとって大切なコミュニケーションがよくなると指摘する。自分に自信を持ち、自分の人生が好きになることが大切で、そうすれば必ず人を好きになると。

そこで大切な発想が、『陽転思考』である。
コップに半分の水があるとき、「もう半分しかない」と思うか?それとも「まだ半分ある」と思うか?陽転思考では「まだ半分ある」と感謝するという。どのような状況であっても肯定的に、「太陽のように明るく考えてゆきましょう」という発想が大切であると語っておられた。「もう半分しかない」と思う人は脳の働きが止まるらしい。もうそこからは動かないので、明るい人生も、豊かな人生もあきらめてしまうということである。

松下幸之助氏は「人生、何が起こっても自分で運がいいと信じ、私は運がいいと決める人には運のよさが出てくる」と語っていたと小田氏は紹介してくださった。
簡単に「できない」「やれない」と言わず、あきらめずに挑戦すること。そこに運が出てくるのかもしれない。そういえば松下語録の中に成功する秘訣として「成功するまでやり遂げる」というのがあったと記憶しているが、どこまでもポジティブに『陽転思考』で頑張りたいものである。



本リポートはTCC会員様の特典となっておりますので、転送・配布等はご遠慮ください。

2006年12月12日発行  NPO法人ザ・シチズンズ・カレッジ

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 【質疑応答】

■Q:ひがみ根性のような性格は変わりますか?
小田:それは直ります。それは自分で訓練していけば直ります。陽転思考とあるでしょう。決して陽転思考というのは、脳天気ではありませんよ。(笑)ある女性の経営者の方が、「私は生まれながらの陽転思考です。売り上げがなくても気にならないし、お客様からのクレーム