【第99期講座】2008年01月-2008年06月

高野 登の講座リポート


■はじめに
ホテル リッツ・カールトンが東京に進出した。六本木のミッドタウンは大きな話題を呼んだが、日本のリッツ・カールトンは10年前に大阪からスタートしている。
日本の支社長である高野氏は当初からリッツ・カールトンの出店にかかわってきたが、その理念とビジョンを具現化するために相当な苦労をしつつ、リッツ・カールトンのブランディングを展開してきた。
今回はそのバックヤードと具体的な事例を紹介しながら、企業経営の本質と人材の育成、リーダーシップの開発といった幅広い話に内容が及んだ。
高野氏によればリッツ・カールトンの基本精神は「紳士淑女に奉仕する私たちもまた紳士淑女です」であると紹介された。サービスの基本は顧客の満足にあるけれど、顧客が満足され感動するサービスを提供するためには、企業のスタッフが満足し、感動していなければ成り立たないという本質的な基本を示唆しておられた。

■リッツ・カールトンの基本的な考え方
五人のホテリエからスタートしたリッツ・カールトンだが、その基本哲学は「社会に対して新しい価値を創造する企業体になろう」を掲げ、社会に対して価値観を提案することをミッションとしたという。
そして企業にとっての利益を再定義し、「自分たちの価値が世の中に浸透してゆくことによって、その一部が回りまわって返ってくる」ものであるとした。さらにその利益の恩恵にあずかることが従業員の給料であると定義したとのことである。そこで、企業収益をあげるためには、自分たちが創りうる可能性、価値をどんどん高めてゆくことを目指しているというのが、リッツ・カールトンの基本的な行動指針であると。

リッツ・カールトンにとっての社会とは何か?
その答えは「第一に従業員とその家族、第二に出入り業者とその家族によって構成される社会がある。これが内部のお客さまとなっている。第三に一般のお客さま、いわゆる外部のお客さま」であるという。

あくまでも従業員とその家族を第一に掲げている理由は、従業員のもつ満足、感動、感性が高められない限り、顧客の満足と感動を提供することはできないという信念が貫かれている。高野氏によれば、メンバーがお客様に提供できるサービスは「知っていること、体験したこと」を超えることがないという。社会に対して価値を創造してゆくためには、従業員スタッフメンバーが感性と教養を高めておかなければ、成り立たないと明言している。

■理念とビジョンがスタッフの人間的成長を促す
大阪にリッツ・カールトンが進出したとき、出店に関わる多くの人々が「大阪から日本一のホテルになった例はない」と言い、大阪という地域の文化に根ざしたホテル経営を勧める人がほとんどだったという。
しかし、高野氏は「我々は世界一のホスピタリティのあるホテルを目指している。だから大阪に出店したとしても、あくまでも日本一を目指す」と公言し、多くのアドバイスを右から左へ受け流したという(笑)。

その志の高さはスタッフメンバーに伝染し、やがては日本一のホテルになるための意識が芽生え、共有することができるようになっていったとのことである。

高野氏は「目標とは日付のつけられた夢」であると主張し、必ず実現したい夢には日付をいれて、目標を明確にすることが大切であると強調していた。

そして一流のホテルのサービスは「お客さまが言葉にされないニーズに敏感に反応する」ことであるという。それがホテルマンの人間的成長の証であり、お客さまのこと、自分自身のことが見えるようになる感性が磨かれるものだと指摘する。

■最高の笑顔を!
高野氏は聴衆に向けて質問する。
「一日に5回から10回、これが笑顔だと家庭や職場でみせていますか?」

高野氏は「頭に届けるためには『ロジック』が必要で、心に届けるためには『笑顔』が大切である」と強調しておられた。
つまり、伝えたい内容があるとき、頭で理解してもらうためにはロジック、つまりは論理性が必要である。情緒に訴えても理にかなっていなければ理解してもらえない。しかしどんなに論理的に正しくても、主張する内容が理にかなっていても、感情や情緒が閉ざされているとやはり心に届かない。だから心を開いてもらうためには「笑顔」というキー(鍵)が必要だ。

私にとっての「最高の笑顔」がどのようなものかを自覚して、周囲の人に発信すること。
人間としての基本は温かい人間関係をどう創り出してゆけるかということであれば、その最大の要素は「笑顔」である。

人に対して「最高の笑顔」で接することができること。
それは相手への思いやりや温かさの表現であり、人間としての感性を磨く基礎となるにちがいない。

本リポートはTCC会員様の特典となっておりますので、転送・配布等はご遠慮ください。

2008年5月20日発行  NPO法人ザ・シチズンズ・カレッジ